図研&ラティス コラボレーションページ

図研とラティスのコラボレーションで生まれる、新しいモノづくりソリューション情報をコラム形式でお届けするページです。

図研/取締役プリサイト事業部長 上野泰生、ラティス/代表取締役社長 鳥谷浩志 対談

日本による、日本のモノづくりのための3Dをつくりたい!

株式会社図研
取締役 プリサイト事業部長 上野 泰生
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ラティス・テクノロジー株式会社
代表取締役 鳥谷 浩志

日本のモノづくりを熟知している日本のITベンダー
上野)2010年5月、図研とラティス・テクノロジーは、資本業務提携の合意を発表しました。日の丸ベンダー同士が手を組むというのは、日本の製造業にとって意義深い事と思っていますが、鳥谷さんはこの提携に、どんな意味や目的を見いだしているのでしょうか?

鳥谷)当社にとっても、今回の提携は大変重要と考えています。ラティス・テクノロジーは技術ベンチャーとして、設立以来13年間、3Dデータの軽量化技術 「XVL」で自動車業界をはじめとした製造業のお客さまを支援してきましたが、多くの製品が高度に電子化してきており、エレキ、メカ、ソフトの連携させたソリューションを考える時期に来ていました。そんな折り、昨年末に上野さんとお話しさせていただく機会があり、「互いに提携すればうまくいくのではないか」と意気投合しました。

図研のPreSightとXVL技術を用いれば、エレキとメカをシームレスに連携させる、今までにないソリューションができると確信したのです。

上野)年末にお会いしたのは、全く別の案件に、私が勝手に割り込んで、この提携話を進めたと記憶しています(笑)。
図研も同じく、モノづくり全般をカバーするために、メカCADやCAEのサービスを専門に行う潟Lャドラボを2007年に設立しました。そして、メカ側のビジネスを進めていく中、設計の流用率や標準化率を高めることや、出来上がった設計情報を、下流のプロセスでもっと活かせるためにはどうするべきか、考えていたのです。
エレキの世界は、ITを使った設計のモジュラー化や、下流での設計データ活用が進んでいて、大きな効果も出ていたので、これを製品全体に適用するためにはまず、中核のツールであるメカCADと、きちんとインタフェースできないといけないわけです。
その上、広くネット経由で使われることを考えると、軽量化されたビューアデータが適しているという結論に至りました。

鳥谷)そこで当社のXVLビューアを選んでいただいたのですが、その理由はどのあたりなのでしょうか?

上野)数多くあるビューアの中で、XVLを選んだ理由の一番は、日本のベンダーであるということです。外資系ベンダーともずいぶんつきあってきましたが、日本のモノづくりをきちんと理解し、それを支援しようと考えているベンダーはほとんどいません。いくら説明しても理解しないのなら、まあどこか良いところだけ、使おうというような発想になりがちでした。
その上、提携企業が突然買収されることもしょっちゅうあり、落ち着いて、一緒にソリューションをつくる気にはなれません。今回、資本提携まで踏み込んだのは、日本の製造業の皆様に、経営基盤も安定したソリューションであることをきちんとアピールしたかったのです。

鳥谷)近年のメカ設計の主役ITである3D CADは外資系ベンダーの製品に市場を席巻されてしまっているのですが、日本のベンダーしか知り得ない、設計以外の日本独自のモノづくりプロセスがあります。これは「文化」であり、我々はその文化を踏襲するソフトウェアを作ってきましたし、今回の図研とのアライアンスで、これをさらに強固なものにしていきたいと考えています。

ビューアは「すり合わせ」モノづくりをプロモートする

上野)日本のモノづくり文化には、「すり合わせ」という特徴があります。3Dデータは客観性が高く、設計者以外の人にとってもイメージが湧きやすい、それを操作が複雑CADではなく、軽量ビューアを使うことで、すり合わせは一層、やりやすくなると思います。ネットワークを介した「バーチャル大部屋」ですね。

鳥谷)先日、XVLユーザの半導体製造装置メーカを訪問したのですが、「自分たちが作っているものを初めて見ました」とおっしゃるんですね。半導体製造装置は約10万点の部品がありますから、3D CADでは装置全体を映しだすことができません。一方、XVLは大量データを扱うことができますから、装置全体を見ながら設計のレビューができます。3D CADの導入は、設計期間の短縮など、確かに大きなメリットをもたらしましたが、それだけでは足りないことがわかります。

上野)それでもモノがつくれていたのは、基本的な能力が高いのでしょうね。しかしこれに依存し過ぎている部分があるのではないかと思っています。「まあ、最後は現場が努力して何とかしてくれるだろう」と。本来、すり合わせの能力はもっと上流の工程で使われるべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

鳥谷)おっしゃる通り、もっとITを活用して、早い段階から問題をつぶす必要があると思います。
実はこのフロントローディングに、興味深い話しがあります。

XVLを導入しているある造船会社なのですが、船を作るときには「地獄」という箇所ができるらしいのです。これは何かというと、何も考えずに鉄板をどんどん溶接していくと、最後は溶接した人がそこから出られなくなってしまう(笑)、だから「地獄」なのだそうです。
「地獄」がつくられないように、船体をどう組み立てていくかをXVLでアニメーション化して、検証しています。特に船のような巨大な建造物は、つくり間違えだけで、莫大なロスコストがかかりますので、製造の観点から設計の検証や見直しをするということは、大変重要なのです。

上野)大きさは全く違いますが、現物試作が出来ないと、下流工程の人たちが、デザインレビューに参加できないという話しは、家電でも良く聞きます。ビューアに加えて、BOM(部品表)を突き合わせることで、上から下まで、より高度なレビュー環境が構築できるのではないかと考えています。

徹底的な3D設計情報の活用を可能にするデータ軽量化ノウハウ

上野) ところで、ラティス・テクノロジーとして、今後の3D製品戦略は、どう考えられているのでしょうか?

鳥谷)当社では「ULDH」「Light DMU」「3D Publish」という3つの戦略を打ち出しています。

まずULDHですが、これは“Ultra Large Data Handling”の略で、我々独自の用語です。
もともと欧米ではLDH(Large Data Handling)と呼ばれていたもので、PC上で大容量の3Dデータを扱うための技術です。
例えば、クルマは10Gバイト、飛行機に至っては5Tバイトもの設計データを扱います。

これらの巨大データは、設計部門ではともかく、まだ32ビットの非力なPCが主流の下流工程部門では、大規模データをスムーズに扱えません。

欧米のCADやビューアでは、せいぜい1Gバイトを扱うのが限界なのですが、ULDHでは10G〜40Gバイト、クルマでいうと8台分ぐらいのデータを32ビットのマシンでもハンドリングできる様に、実装をはじめています。

上野) すごい圧縮率ですが、他社にそのような技術はないのですか?

鳥谷)もちろん他社にもありますが、当社は独自のノウハウと圧縮アルゴリズムを使っていて、日本でも欧米でも特許を取得しています。モノづくりにかかわる様々な部署で3D設計データを有効に活用するためには、まず軽量化が一番重要と考えていて、年々圧縮技術も高度化しています。

「使える」DMUをBOMと共に進化させれば、真の意味の製品ライフサイクル管理に

鳥谷) 次にLight DMUですが、既存のDMU製品には問題があります。高価なこと、使いこなすのが非常に難しいこと、データ量が巨大なことの3つです。ところが、DMUというものをよく観察してみると、少し乱暴ですが「80%のビジュアライゼーションと20%のシミュレーション」で成り立っていて、開発コストの大部分はこの20%のシミュレーションに掛かっています。

そこでLight DMUは、ビジュアライゼーションに特化した製品として、既存製品の20%の価格で提供することにしました。
これで価格の問題は解決です。2番目と3番目の問題点は、軽量なXVLデータ形式、そして先ほど述べたULDHという技術で解決できます。

上野) 豊富な機能があっても、実際には使いこなせない高価なDMUよりも、人間の思考や判断を補助する機能に絞ったDMUを、もっと安く提供しようということですね。

鳥谷) その通りです。そして更に重要なのは、設計変更にいかに追従できるかということです。この点をまさに、PreSightのBOM機能連携してカバーしていきたいと考えています。

上野) PreSightではこれを、「ビジュアルBOM」と呼んで製品化しようとしています。BOMの語源は「帳票」ですが、単なる帳票では、設計や製造の現場は使ってくれません。BOMと設計データを連係させることで、製品バリエーションの確認や、設計変更、工程の設計・検証などが全て視覚的に行えます。これはどのプロセスにとっても大きなメリットです。

鳥谷) PLMは「製品ライフサイクル管理」ですが、今回の提携で実現するソリューションは、本当の意味で製品ライフサイクルを扱う初めてのケースといってもいいと思います。

上野) XVLとCADとBOMがつながって、製品ライフサイクルを管理できる事例をたくさんつくりたいですね。

「賢い現場」を正しい情報で支援すれば、さらに賢いモノづくりができる

鳥谷) XVLにはもう1つ、3D Publishというソリューションがあります。これはITツールに慣れていない工場の作業者などに、ExcelやWordに埋め込んだ設計データや製造工程データを、活用してもらおうというものです。書類作成作業を効率化できますし、またこれもPreSightで版管理できれば、設計変更に対しても、効率的で正確な情報伝達を行えます。

上野) 指示図面のIT化で、どんな効果が期待できますか?

鳥谷) 先日、あるXVLユーザの工場を訪れたのですが、そこでは図面からXVLに切り替えたところ、歩留まりが一桁上がったそうです。今まで図面上で不足していた寸法は、現場が独自の判断で補足して作っていたのですが、XVLではすべての寸法が見られます。結果、加工に必要な寸法があれば、設計に依頼しなくとも、現場で確認できるため、加工が正確になったかららしいのです。

この話を聞いて思ったのが、「やっぱり日本の現場の人は賢い」ということです。賢い現場の人にITで正しい情報をきちんと伝えてあげれば、さらに賢いモノづくりができるはずです。

上野) 欧米だったら、「寸法入ってないから作れません!」と言って設計に戻すのでしょう。現場の機転も、日本のモノづくりの大きな特徴に思えます。

鳥谷) 実は3Dマニュアルは、欧米の方がウケがいいんです。欧米の現場の人たちはイチから事細かに説明を受けることを前提に、モノづくりをしていますので。この辺りにも、日本と欧米のモノづくりの文化の違いが表れていますね。

「すり合わせ」をITで効率化した新しい日本のモノづくりを

上野) 日本のモノづくりの長所を踏まえたソリューションを、我々ITベンダーは考えなければなりません。
鳥谷さんは、今後の日本の製造業を支えるITの姿についてどのようなイメージをお持ちですか。

鳥谷)グローバル競争のなかで、インドや中国と同じようなモノづくりをしていては、絶対に勝てません。日本の固有のモノづくりをITで支援し、より効率化していくことが、今後の製造業に必要だと思います。 当社のXVL技術を図研のソリューションに組み込むことで、これを実現していく第一歩は踏み出せると考えています。

上野) 日本人は「高度なものづくり」は得意ですが、その付加価値を上げて、世界に売っていくという観点では、決して上手くありません。一方新興国の技術は急速にキャッチアップしてきていますから、もう日本人にしか作れないものというのはなくなりつつあります。
擦り合わせの効率性を上げて行くためにも、自動化や省力化でモノづくりをもっとシンプルにしていく必要があると思いますし、その領域でITができることはまだまだたくさんあると思います。

今後とも協力して、日の丸製造業を支援する、ソリューションをつくっていきたいですね。 今日はおいそがしいところありがとうございました。

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DM課 課長 豊田 真教

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