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図研とラティスのコラボレーションで生まれる、新しいモノづくりソリューション情報をコラム形式でお届けするページです。

ラティス/取締役 企画本部 本部長 原田 毅士

なぜXVLがモノづくり情報の「共通言語」になり得るのか?
- コンセプトを実現するための基礎技術のお話 -

ラティス・テクノロジー株式会社
取締役 企画本部 本部長
原田 毅士
前回のコラムでは図研の豊田様から、図研とラティス・テクノロジー(以下、ラティス)のコラボレーションによるエレメカ連携の実現、そしてラティスが持つ3Dデータフォーマット技術「XVL」と図研のBOM技術が連携することで、日本のモノづくりに大きな変革をもたらすことを紹介していただきました。

ところで、読者の皆さんはXVLという技術について、どの程度ご存じでしょうか? 「BOMとXVLの連携」と聞いても、「BOMはすぐにイメージできるけど、XVLについてはちょっと…」という方も多いかもしれません。そこで今回のコラムではXVLにフォーカスを当てて、「XVLとは一体どういう技術なのか?」「XVLは何に役立つものなのか?」といった点について、一から解説してみたいと思います。

そもそもXVLとは一体どのような技術なのか?

「XVLとは一体何か?」

この漠然とした問いにあえて答えるとするなら、以下のような回答になるでしょうか。 「モノづくりのためのさまざまな情報を、“形状”と結び付けて管理・参照・編集するためのデータフォーマットである」

ただし、こう聞いてもまだピンと来ない方が大半かと思います。1つずつひも解いていきましょう。

まず、「モノづくりのためのさまざまな情報」とは一体何でしょうか?一番分かりやすい例を挙げれば、「製品構成」や「寸法」「注記」などといった、製造で必要とされる各種の情報がそれに当たります。しかし、モノづくりのプロセスは製造だけではありません。設計、生産技術はもちろんのこと、調達や販売、保守など、製品のライフサイクルに関わるありとあらゆるプロセスが組み合わされてモノづくりは成り立っています。そこでXVLでは、こうしたさまざまな業務で必要とされるいろいろな種類の情報を、そのデータフォーマットの中に含むことができるようになっています。

こうした情報を、「“形状”と結び付けて」管理・参照・編集できるデータフォーマットがXVLなのです。 ところで、「形状」とは一体何を指すのでしょうか?これは、今さら説明するまでもないでしょう。3D CADのデータに代表されるような、3次元の形状データのことです。これを、先ほどの「モノづくりのためのさまざまな情報」と結び付け、1つのファイルで管理できるようにするためのデータフォーマットがXVLなのです。

ところで、ここまでの説明を聞いただけでは、きっと次のような疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。「それでは、3D CADのデータフォーマットと何ら変わらないではないか」と。しかし実際には、XVLと3D CADのデータフォーマットは、決定的に異なっています。そしてその相違点こそが、XVLが持つ最大の特徴なのです。

最大の違いは、形状データのサイズが圧倒的に小さいことです。どれぐらい小さいのか、具体例を挙げてみましょう。一般的な3D CAD製品では、ある大規模な製品の設計データは約20〜30GBに上ります。しかしこれがXVLでは、わずか200〜300MB、およそ100分の1で済んでしまうのです。

この形状データの圧倒的な小ささが、XVLの最大の特徴です。XVLは1999年に産声を上げましたが、当初の開発目的は「3Dデータをネットワークを介して自在に流通させる」ことにありました。しかし当時は現在と違い、まだネットワークの帯域幅が狭い時代でした。そのため、3Dデータをネットワーク上に載せるためには、何とかしてデータサイズを小さく圧縮する必要があったのです。

この当初の課題をクリアした結果、XVLは初めて世に出たのですが、今度は3Dデータを表示するPC端末の性能の壁が立ちはだかりました。とある自動車メーカーから「PC上でクルマ1台分の3Dデータを表示したい」という依頼を受けたのですが、当時のPCには搭載メモリ容量に制限がありました。そのため、消費メモリ量を節約するために、形状データのさらなる軽量化に取り組みました。


こうして、長年に渡って形状データの軽量化に心血を注いできた結果、先ほどご紹介したように、3D CADの約100分の1のサイズという現在のXVLのデータフォーマットが出来上がったのです。

XVLはどのようなデータ構造を持っているのか?

形状データの圧縮にはさまざまな技術が使われていますが、その中の1つに「曲面を“推定”する」という技術があります。3D CADのデータ容量が大きくなる原因の1つに、曲面の詳細なデータを保持していることがあります。一方、XVLの場合は、曲面自体のデータは持たずに、周囲を囲んでいる線の情報から曲面の形状を推定します。そのため、曲面そのもののデータをメモリやファイルから追い出すことができるのです

そのほかにもさまざまな圧縮技術を駆使して、コンパクトなバイナリデータとして形状データをXVLのファイルに格納しています。ここで、XVLの基本的なデータ構造を見てみましょう。以下の図をご覧ください。


上半分の黄色い部分に含まれている「グラフィックプロパティ」「製品構成ツリー」「技術情報」は、主に3D CADのデータをXVLのフォーマットに変換して格納することを想定しています。形状データは、この中の製品構成ツリーの部分に含まれることになります。

一方の下半分の青い部分に含まれる「工程・分解ツリー」「アニメーション」「干渉・断面情報」には、3D CAD以外のツールで入力される「モノづくりのためのさまざまな情報」が格納されます。(断面情報などには一部、形状データが含まれます)

このような構造で、形状データと、モノづくりに必要な「構成・属性データ」を1つのファイルに収めているわけですが、それぞれの格納方式は少しだけ異なっています。実は、後者の「構成・属性データ」は、XML形式で格納されています。XVLは、もともとはXMLをベースに開発されたデータフォーマットなのです。ただし、前者の形状データの方は高い性能を実現するためのバイナリデータなので、XMLのドキュメント形式には収まりません。そのため、形状データだけはXMLとは異なる、独自の形式で格納されています。

共通のデータプラットフォームとしてのXVL

なぜここであえてXVLのデータ構造を紹介したのかといいますと、先ほど説明した「3D CADからの変換データ」「XML形式の構成・属性データ」という2つのデータ特性が、XVLの有用性を理解する上でとても重要なポイントになるからです。

ラティスでは、主要な3D CAD製品の設計データを、XVLフォーマットに変換するツールを提供しています。これを使えば、設計部門で異なる種類、異なるバージョンの3D CADを混在させて使っていたとしても、それぞれの設計データから共通する情報を抽出して、XVLという共通のデータフォーマットに変換して集約することができます。

また、構成・属性データの部分はXML形式になっているため、柔軟に情報を追加していくことができます。さらに、XMLのフォーマット自体が変わらなければ、後から情報を追加していったとしても、それ以前のデータとの互換性はきちんと保たれます。

この2つの特性は、モノづくりにおける情報の活用という点で、実に大きな意義を持っています。

設計者がそれぞれ異なる3D CAD製品を使っているため、設計データから抽出した情報同士に互換性がなく、モノづくりに有効活用することができない。あるいは、たとえ同じ種類の製品であっても、バージョンアップしたらデータの互換性がなくなってしまい、それまでPDMに蓄積してきた情報との互換性がなくなってしまった…。このような問題に、今多くの企業が直面しています。

そこで、XVLという共通のデータフォーマットを導入することで、3D CAD製品の種類やバージョン、あるいはデータの互換性などにまつわる問題をスマートに解決することができるのです。こうした共通データプラットフォームとしてのXVLの役割を、私たちは「モノづくり情報の“共通言語”」と呼んでいます。

BOMを通じて部門間をまたがるモノづくりの共通言語に

しかし、「共通言語」としてのXVLの最大の強みは、実は別のところにあります。それは、社内の異なる部門間でXVLを共通データとして共有できる点です。既にご紹介した通り、XVLの最大の特徴は、非常に軽量であることです。そのため、3D CADの環境が整っていない部門であっても、設計データを3次元の形で簡単に参照することができるのです。さらに、軽量であるが故に、データベースやネットワークといったIT基盤にも余計な負荷をかけません。

設計部門で作成した3D CADの設計データを一度XVLに変換してしまえば、例えば部品の干渉チェックをXVLの3Dデータ上で行ったり、工程設計で組み立ての順番を検証したり、あるいはサービスマニュアルのイラストをXVLの3Dデータから自動的に生成することまでできます。


実際、多くの企業がこうした用途でXVLを活用しており、業務時間の短縮や品質向上、コスト削減などの効果を上げています。また、グローバル生産を行っている企業が海外拠点とやりとりをする際にも、XVLは威力を発揮します。軽量なXVLであれば、海外拠点ともネットワークを通じて3Dデータを簡単に共有することができます。視覚的に分かりやすい3Dデータを互いに共有できれば、言葉の壁を越えたスムーズなコミュニケーションを図ることができるでしょう。

ただし、XVLそのものはあくまでもデータフォーマットであり、その実態はファイルデータです。先ほど幾つか例を挙げたように、全社レベルでXVLを共有し、活用するためには、そのためのデータベース基盤が不可欠です。これを実現するのが、まさに図研のPreSightが備えるBOM基盤なのです。
XVLデータは、PreSightのBOMと連携し、それを通じてモノづくりのさまざまな現場に行き渡り、そして活用されていくわけです。

この辺りの仕組みについては、前回の豊田様のコラムに詳しく書かれていますので、そちらを参照していただければと思います。ラティスとしても、PreSightのような広範なデータ基盤と連携してこそ、XVLが真に日本のモノづくりに変革をもたらすことができるものと信じています。

さて、今回はXVLという技術に焦点を当てて解説してみましたが、いかがでしたでしょうか?本コラムの第1回と第2回では、図研の技術とラティスの技術の連携がもたらすさまざまなメリットを紹介していますが、今回のXVLについての解説を踏まえた上でもう一度読み返してみると、より一層理解が深まるかもしれません。

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